【 覚せい剤 】
(改訂 11/09/23)
[覚せい剤とは、化学薬品としての性質]
覚せい剤とは、正確には、覚せい剤取締法第二条で指定された薬物の総称です。英語では、覚せい剤に相当する用語がなく、Stimulants(覚醒系薬剤)には、アンフェタミンのほか、コカイン、リタリン、エフェドリン、カフェインなど中枢神経系刺激薬剤全てを含みます。覚せい剤という用語は、ドイツ語のWeckamin(覚せいアミン)に由来するようです。アンフェタミン (Amphetamine)様物質は、覚せい剤の代表ですが、一般には覚せい剤という用語は、アンフェタミン類と同義語として使用されています。化学品名は、フェニルアミノプロパン(アンフェタミン)、フェニルメチルアミノプロパン(メタンフェタミン)です。英語圏では、短く、"Meth" と呼ばれることがあります。「覚醒剤」と「覚せい剤」を区別して、前者にはコカインなど広義の覚醒系薬剤を含め、後者をアンフェタミン系薬剤に限って使用することがあります。
化学構造の類似した多くの化合物が覚醒作用、幻覚作用、麻酔作用を持ち、まとめて、Amphetamines
と、複数形で呼ばれます。この中には、アンフェタミンのほか、デキセドリン(Dextroamphetamine)、エフェドリン(Ephedrine)、リタリン(Methylphenidate)、エクスタシー(MDMA,
E, バツ、バッテン)などが含まれます。アンフェタミンは1887年にEdelemoにより合成され、メタンフェタミンは1893年に日本の長井長義により合成されました。メタンフェタミンにはアンフェタミンの約10倍の薬理作用があります。日本で乱用されているのは、ほとんどがメタンフェタミンで、ヨーロッパで乱用されてきたのは、アンフェタミンです。
コカイン、マリファナやカフェインと違って、アンフェタミンは、自然界には存在せず、化学的に合成されます。もっとも、アンフェタミンの原料であるエフェドリンは、昔はマオウ(エフェドラ)というハーブから抽出されました。今は化学的に合成されます。アンフェタミンには幾つかの合成法がありますが、エフェドリンから合成する場合が多いようです。
日本の覚せい剤はほとんどすべて国外で製造され、密輸入されたものです。覚せい剤のストリ−トネイム(売人、常用者などの呼名)は、シャブ、エス、スピード、やせ薬などです。終戦直後には「ヒロポン」と呼ばれました。
覚せい剤は水に溶けやすい白色、無臭の結晶で、なめると若干の苦味があります。静脈注射が従来の摂取方法でしたが、最近は過熱吸引法(吸煙、あぶり)や錠剤、液剤の乱用がはやってきています。注射の暗いイメージがなく、手軽なこと、注射痕が残らないことがその理由です。錠剤や液剤などの内服では、脳内に到達する前に一部は肝臓で代謝されますが、静脈注射では直接血液内に入りますから、危険性はより大きいと言えます。過熱吸煙の危険性はほぼ注射に匹敵するという専門家の指摘があります。
2001年頃から錠剤型麻薬の押収が急増しており、そのほとんどが「エクスタシー」と呼ばれる幻覚作用の強いMDMA(合成麻薬)です。MDMAは、日本の法律上は、覚せい剤ではなく、麻薬と分類されますが、上記のように、化学的には、覚せい剤、アンフェタミン類に含まれる化合物です。作用も、覚せい剤と同様で、末端価格も1錠5000円以下(原価は5円)と比較的安価なことから、繁華街などで10-20歳代の若年層への密売が横行しています。 [TOPへ]
[覚せい剤の使用方法]
(1) 注射器に入れて水に溶かし、静脈注射する(通称、ポンプ)。
(2) アルミホイルの筒に覚せい剤の結晶を置いて、下からライターの火であぶり、煙をストローで吸う(通称、あぶり)。
というのが代表的な使用方法です。前者が伝統的な使用方法。後者が最近の使用方法です。
(3) 錠剤型のヤーバー、ヤーマと呼ばれる覚せい剤を服用する。
(4) 結晶を刻んですりつぶしてストローで鼻から吸い、鼻粘膜から吸収します(通称、スニッフ、スニッフィング)。
(5) ジュースや飲み物の中に、覚せい剤の結晶を2粒くらい入れて溶かして飲む。
ほかに、変わった方法として、以下のような方法があります。
(6) 弁当などについている金魚(ロケット)型の醤油入れ容器に、覚せい剤と蜂蜜などを混ぜいれ、使用時に飲み込む。
(7) 覚せい剤を少量の水に溶かして、手の指で女性性器(膣内)や肛門に塗りこむ。
[覚せい剤の作用と害]
覚せい剤(アンフェタミン類)の作用機序は, シナプス前部でのモノアミン類(ドパミンとノルアドレナリン)の放出を促進し、再取り込みを抑制することによって、神経伝達物質であるドパミンやノルエピネフリンの脳内シナプス間隙における濃度を上昇させ、その結果脳の一部の機能を活性化すると考えられています。
覚せい剤には食欲抑制効果があるために、ダイエットのために使用されることがあります。また「やせ薬」の中に混入されていることがあります。その危険性と流行性から、日本の薬物乱用対策上、もっとも重要視されている薬物です。
覚せい剤を使用すると、目が眩むような強烈な快感を体験し、やがてそれが、多幸感や高揚した気分に変わってゆきます。摂取してから30分位は強烈な興奮と快感を覚えますが、その後は3時間から12時間位にわたって覚醒状態が持続し、その間、多くの場合、使用者は眠ることも物を食べることもできません。覚せい剤使用者は、多くの場合は、中枢神経興奮作用により一時的には気分が高揚し、自信が増し、疲労感がとれるように感じますが、効果が切れると激しい抑うつ、疲労倦怠感、焦燥感に襲われます。
また連用により、脳のドパミン系ニューロンが賦活され、幻覚や妄想などの精神病症状が出現します。覚せい剤は乱用によって攻撃的、暴力的傾向を起こしやすく、依存性が強く、長期の後遺症を残しやすいために、もっとも危険な薬物とされています。 [TOPへ]
[覚せい剤取締法]
日本の法律では、覚せい剤、麻薬、あへん、劇物(シンナー、トルエン、接着剤など)は区別されてそれぞれ取締の対象になっています。覚せい剤取締法は、1951年に制定され、その後数回の罰則強化を経て現在に至っています。この法律により、覚せい剤の製造、流通、販売、所持、使用のすべてが厳しく禁止されています。日本の薬物事犯の90%以上が覚せい剤関連の犯罪です。薬物乱用は日本では、交通犯罪を除く全逮捕者の5分の1、公判を請求された者の4分の1、刑務所入所者の3分の1にみられるといわれています(2000年頃)。
覚せい剤(メタンフェタミン)は、関東ではグラム単位で売る方法、関西では1万円何グラムで売る方法が多いと言われます。ポリエチレンの小さな袋に小分けされて売られることが多く、この包みをパケと呼びます。パケットの略語です。1パケの量は、売人と場所によっていろいろですが、0.3〜0.8グラム位のことが多いようです。売人が、1グラムと言っていても、実際は0.7-0.8グラムであることが多いとも言われます。若者向けに、もっと小分けして売ることもあるようです。価格は、その時々の需要と供給量、売人と購入者の関係によってそれこそいろいろです。当然、常用者、大量使用者、頻回購入者には安くなります。小売価格は、2009年頃、東京都では、0.2グラム当たり1-2万円といったところです。1回当たりの使用量は、初心者では、塩酸メタンフェタミン純粋量で、約0.03グラム、およそ耳かき1杯分です。幻覚妄想状態で専門病院へ入院するような患者群では耐性の為に使用量が増加しており、1回分が0.05-0.15グラムに達するようです。
薬物の専門家によると、覚せい剤は使用後4、5日でほとんどが排泄されてしまうといい、1週間近くが経過すると尿検査でも陰性になります。 [TOPへ]
[第3次覚せい剤乱用期]
1998年1月、警察庁は第3次覚せい剤乱用期を宣言しました。これは、日本が終戦直後の混乱期の第1次、昭和40年代半ばから63年にかけての第2次乱用期に次ぐ戦後3番目の覚せい剤乱用時代に入ったことを意味しています。第1次乱用期には、戦地からの引揚者や不定期労働者、学生、一部の芸術家や芸能人、暴力団、水商売の女性などの比較的限られた人々が乱用者になりました。第2次乱用期は、健全層と呼ばれる主婦やサラリーマンまで乱用が広がったことが特徴でした。第3次覚せい剤乱用期は、未成年者、中・高校生の乱用の急激な増加に特徴があります。 [TOPへ]
[最近の覚せい剤乱用の特徴]
日本への覚せい剤密輸ルートは、1970年代は主に韓国から、80年代は台湾から、90年代は中国からといわれてきました。97年ごろから北朝鮮ルートの密輸が増えています。1999年の押収量は、約2トン。覚せい剤犯で逮捕された人は、1800人にのぼりました。密売人のほとんどは、不法残留外国人で、最近ではイラン人が多いといわれています。彼らは転々と居住地を変えるため、捜査が困難です。
第3次覚せい剤乱用期(1998-)の特徴として、@乱用者が従来の成人層から青年層、中高生に広がりつつあること、A静脈注射法(ポンプ)に代わる過熱吸煙法(アブリ)の普及、B携帯電話を使った入手方法の普及、C「覚せい剤、シャブ」に代わる「エス」、「スピード」などの呼称、などが挙げられます。
乱用薬物の移行に関して、従来は、シンナー乱用から覚せい剤静脈注射(ポンプ)へ、というパターンが多かったのですが、現在では、マリファナ乱用から覚せい剤吸煙(アブリ)へ、という傾向があるようです。アブリ群の一部は、乱用、依存の進行と共に、ポンプに移行します。これら新しい乱用層へは、友人(とくに同性友人)から誘われることによって広がることが多いようです。
過熱吸引法の方が、注射に比べて、初回使用から精神病症状発現までの期間が短いという報告があり、この原因に関して、吸煙の方が注射より効果の持続期間が短いために、より早く強迫的使用に陥りやすい可能性があるとされています。
アブリでは、注射の廻し打ちの際ようなC型肝炎、HIVなどの感染の危険はないものの、嗜癖性に関しては、注射に比べて安全とは言えない、という指摘があります。なお、吸煙でも、注射と同程度に、尿中からメタンフェタミンが検出されます。 [TOPへ]
[覚せい剤の急性・慢性中毒]
覚せい剤の急性中毒は、高揚した気分で始まり、続いて、多幸感、過活動性、過剰な社交性、落ち着きのない言動、過覚醒と不眠、多弁、不安、緊張、警戒心、誇大性、対人関係へのこだわり、常同的で反復的な行動(一見したところ、無目的に見える単純な動作の繰り返し)、情緒不安定、判断力低下、衝動性、怒り、暴力行為などが見られます。慢性中毒の場合には、これらの症状に加えて、空虚感、悲哀感、社会的ひきこもりを伴う感情鈍麻、さらに後述するような覚せい剤精神病、フラッシュバック、性格変化なども混在するようになります。
身体的には、頻脈(または徐脈)、瞳孔散大、血圧上昇(または下降)、発汗(または悪寒)、嘔気・嘔吐、食欲低下と体重減少、精神運動興奮(または制止)、筋力低下、呼吸抑制、胸痛、不整脈、錯乱、けいれん発作、ジスキネジー、ジストニー、昏睡などが見られます。慢性の覚せい剤中毒者の中には、極度のやせや多くの虫歯、歯の欠損が見られることもあります。歯の問題は、主として覚せい剤による唾液の分泌障害と口腔内不衛生のためと考えられます。特徴的なので、英語圏では、メスマウス "meth mouth"と呼ばれることがあります。→このページの下部に説明があります。大量投与の場合には、循環不全や脳出血によって死亡することがあります。これを急性中毒死といいます。
覚せい剤乱用者の死因としては、上記の急性中毒死が多く、マスメディアなどでは「過量服薬によるショック死」と表現されます。基底には心臓血管系の障害が想定されます。ほかには、事故による外傷死、自殺などが多いようです。
[覚せい剤の離脱]
大量、長期にわたってアンフェタミン使用を中止(または減量)すると、数時間から数日以内に不快な症状が見られます。これを離脱症状と言います。通俗書や古い(1980年代以前の)専門書では、「覚せい剤では、離脱症状は見られない」と書いてあることがあります。
覚せい剤の離脱症状としては、疲労感、鮮明で不快な夢、過眠(または不眠)、食欲亢進、精神運動制止(または興奮)などが見られます。
[覚せい剤の害・身体的側面]
覚せい剤の害は、身体的側面、精神的側面、社会的側面の3つに分けて考えられます。このうち、精神的、社会的側面の害がとくに大きいのが覚せい剤の特徴です。覚せい剤への身体的反応としては、上記の覚せい剤中毒、離脱症状のほか、静脈注射の場合には、注射局所の膿瘍、細菌性心内膜炎、B型・C型肝炎、エイズなどの感染がみられます。とくにまわし打ちをする患者では、C型肝炎感染率は極めて高率(50%以上?)です。過熱吸引の場合には、鼻腔内の炎症や鼻出血がみられることがあり、さらに肺水腫、心筋症、角膜潰瘍の報告があります。
[覚せい剤の害・乱用依存傾向]
覚せい剤は精神的依存性が強いので、いったん始めると、止められなくなります。また、耐性形成が強いので、同じ効果を得るためにどんどん量と回数が増え、コントロール不能になります。またそのために薬物購入費用が急速に増えます。暴力団や売人が、最初の数回はただで覚せい剤を与えることが多いのは、このことを見越しているからです。
[覚せい剤の害・覚せい剤精神病・逆耐性現象・フラッシュバック]
覚せい剤の精神面での害としては、このほか、覚せい剤精神病、性格変化などが考えられます。
覚せい剤使用を続けると統合失調症に似た幻覚(幻聴や幻視など)や妄想が出現するようになります。強い恐怖感を伴う迫害的内容が特徴的です。これを覚せい剤精神病と言います。この幻覚妄想は、乱用者の体質や覚せい剤の使用量によっては、ただ1回の使用で出現することがあります。さらに恐ろしいことには、この幻覚や妄想などの精神病症状は、次第に少量の覚せい剤使用で出現するようになり、ついには使用を止めても出現するようになります。この現象は「逆耐性現象」(感受性の亢進)と言います。覚せい剤使用中止後、数カ月から数年後にも幻覚妄想状態が短期的に突然出現することがあり、この症状を「フラッシュバック」と言います。
覚せい剤精神病やフラッシュバックは、時には薬物使用後5年以上も続くことがあります。ほとんど回復不能のように見えることもありますが、一方では、10年以上幻覚妄想が続いていても、次第に回復することがあります。治療法としては、統合失調症の治療に準じます。つまり短期・中期的には、抗精神病薬投与が必要です。時には、幻覚妄想状態の苦しさから逃れるために、薬物(覚せい剤や、処方薬、市販薬、違法薬、脱法ドラッグ)の再使用や乱用に陥ったり、自殺行為に走ることもあります。中期・長期的には、カウンセリングや自助グループが重要です。いずれにしても周囲の理解が大切です。
性格変化については、乱用者は次第に疑い深く、怒りっぽく、衝動的になります。一方で、意欲が減退し、非活動的になります。 [TOPへ]
[覚せい剤精神病の欠陥状態]
覚せい剤長期乱用の後遺症を「覚せい剤精神病残遺症候群」といい、持続型精神病状態、自然再燃型精神病、不安神経症様状態、身体不定愁訴、幻覚妄想状態が再燃しやすいこと、人格変化(情動不安定、敏感性)などが見られます。統合失調症の残遺(欠陥)状態と区別が困難なこともあります。これは、長期の覚醒剤乱用によって「非可逆性の過敏性」が生じるためです。この状態は「化学的キンドリング」とも呼ばれ、非特異的な刺激でカテコールアミン系が亢進することによってフラッシュバックが生じると考えられています。
[ 覚せい剤の害・社会的側面]
覚せい剤乱用者は、しばしば常軌を逸した暴力行為を引き起こします。筆者の見た例では、家族や恋人に刃物で切りつけたり、ケンカ相手の指、耳、手足を切り落とそうとした乱用者が数人いました。自分の身体を切り刻むこともあります。また薬代を手に入れるために家族や周囲の人のすべてを巻き込み、経済犯罪をおこします。さらに乱用薬物が暴力団や国際テロ集団の資金源になっています。薬代を手に入れるために違法薬物の売人になるという自己増殖のパターンがしばしばみられます。
覚せい剤は、その危険性と流行性から、日本の薬物乱用対策上、もっとも重要視されている薬物です。食欲抑制効果があるために、ダイエットのために使用されることがあります。また「やせ薬」の中に混入されていることがあります。覚せい剤を使用すると、多くの場合は、中枢神経興奮作用により一時的には気分が高揚し、自信が増し、疲労感がとれるように感じます。一般には1回の使用で5−8時間、ハイの状態が続きますが、効果が切れると激しい抑うつ、疲労倦怠感、焦燥感に襲われます。また連用により、脳のドパミン系ニューロンが賦活され、幻覚や妄想などの精神病症状が出現します。覚せい剤は乱用によって攻撃的、暴力的傾向を起こしやすく、依存性が強く、長期の後遺症を残しやすいために、もっとも危険な薬物とされています。覚せい剤を4、5回以上使用すると、いわゆるハマッた状態になり、止めるのが困難になります。3、4カ月使用すると幻聴、幻視などの幻覚が出現し始めます。5年以上使用すると、完全な精神病状態になり、使用をやめても、フラッシュバックなどの後遺症が残る可能性が高いと言えます。もっとも、使用量、使用期間と症状の関連には極めて個人差が大きいようです。筆者は、初回使用時に、幻覚や妄想の出現した例を経験しています。だから、1、2回の使用なら安全とは言えません。ほとんどの依存者は、1回だけと思って使用し始め、すぐにやめられると思いながら、やめられなくなっている、ということを知ってほしいと思います。また、たった1度だけの使用でも、犯罪行為です。筆者は初回使用時に捕まって有罪になった人を数名知っています。
日本の法律では、覚せい剤、麻薬、あへん、劇物(シンナー、トルエン、接着剤など)は区別されてそれぞれ取締の対象になっています。覚せい剤取締法は、1951年に制定され、その後数回の罰則強化を経て現在に至っています。この法律により、覚せい剤の製造、流通、販売、所持、使用のすべてが厳しく禁止されています。 [TOPへ]
[覚せい剤乱用の早期発見のてがかり]
●快活(ばかに元気)。●不眠(何日も平気で徹夜したりする)。●不安、緊張。●落ち着きがなく、じっと座っていられない。●急に社交的になった。●過剰に警戒的。●被害妄想的。●興奮しやすい。●怒りっぽく闘争的。●錯乱。●まとまらない会話。●頭痛。●耳鳴。●鼻出血(吸引による鼻腔内炎症)。●口渇。●食欲不振。●体重減少(やせてきた)。●目付きがちがう(目がギラギラしている)。●瞳孔(目の瞳)が散大している。●性欲、性感、精力亢進。●判断力低下。●やたら水分をとる(口渇のためペットボトル飲料水を持ち歩くことが多い)●過眠(24時間以上も寝続ける−離脱期の症状)。●食欲の亢進(離脱期の症状)。●抑うつ的(離脱期の症状)。●注意と集中の障害(離脱期の症状)。●現物(小さなビニール袋−パケという)。●道具(小型注射器、アルミホイル、ライター、ガラス管、カミソリ、スプーン、ストローなど)。●注射痕。●広範囲、重症の齲蝕(虫歯)→このページ下部の項目「メスマウス」参照
著明な離脱症状はクラッシングといい、しばしば高用量(スピードラン)の使用後にみられます。疲労と抑うつが特徴的で、数日間寝たきりになります。最近、私が直接体験した数例では、離脱期(継続使用が途切れた時)の過眠と食欲亢進がもっとも特徴的でした。24時間以上も寝続けて、たまに起きるとガツガツ大食してまた寝るという行動パターンは、あまり他の状況では見られないと思います。ただし、このことは、本などには書いてないようなので、覚せい剤乱用者の多くに見られる現象なのかどうかはわかりません。誰か経験した人、または、こういう手掛かりがあるという人は教えてください。(→ 04/07/22、ビジターの方から、メールをいただきました。「元覚せい剤常用者です。私を含めて、多くの仲間たちが離脱期に過眠と過食を経験しています」FFさん、女性、26歳)
最近のアブリとよばれる吸煙による使用法では、覚せい剤使用者の部屋にストローが散らかっている。台所のアルミホイルの減り方が早い。サイフ、定期入れの中にアルミホイルが入っている、鞄やハンドバックにストローを入れ持ち歩いているなどの徴候から、覚せい剤乱用に気づくことがあります。 [TOPへ]
[覚せい剤関連の隠語・通称]
覚せい剤のストリートネイム(密売者、乱用者などの呼称、呼び名、通称)としては、シャブ、ネタ、ブツ、クスリ、スピード、S、エス、アイス、アンポンタン、冷たいの、冷たいやつ、冷たい奴、キンギョ、金魚、ロケット、宇宙食などがあります。結晶状の覚せい剤のことをガンコロといい、錠剤型覚せい剤は、ヤーバー、ヤーマなどと呼ばれます。注射器の隠語としては、ポンプ、シャキ、キー、キカイなどがあります。売人のことは、元締め、卸し元、ネタ元、売人、バイニン、シャブ屋、コシャなどといいます。乱用者のことを、客、キャーなどと言い、時には、ポン中、シャブ中、宇宙人などと呼びます。覚醒剤の入れ物を小分け袋、パケ、入れもんなどといいます。ハイになったり、幻覚状態になることを、ボケてる、ほうけてる、切れてる、飛んでる、翔んでる、しずんでいるなどといいます。また、覚せい剤使用者のことを「スピーダー」と呼ぶことがあります。
[メチルフェニデート(リタリン)乱用について]
メチルフェニデート (Methylphenidate) は中枢神経興奮剤として医療的に処方されることがある薬剤(商品名リタリン、Ritalin)です。しかし最近、この薬剤の乱用のために当院を受診する人が増えてきました。アメリカの精神障害診断基準、DSM−W(1994)でも、物質関連障害の章のアンフェタミン様物質にメチルフェニデートが含まれることが明記されています。メチルフェニデートの中枢神経興奮作用はメタンフェタミンとカフェインの中間であるとされています。当然、乱用によって覚せい剤乱用と同様の幻覚妄想などの副作用をひきおこし、依存性があります。[参考:リタリン乱用]
[エフェドリン、エフェドラ乱用について]
覚せい剤、メタンフェタミンは、エフェドリンから科学的に合成されます。エフェドリンはアンフェタミン類薬剤のひとつで、それ自体が乱用対象薬剤です。また、かつてエフェドリンの原料であった植物、マオウ(エフェドラ)は、日本では漢方薬として古くから使用されています。ところが、近年アメリカで、エフェドラ製剤がハーブ系やせ薬として市販されるようになり、エフェドラ製剤の副作用による多くの死亡例が報告されています。日本でも個人輸入され、副作用被害の報告が増えています。 [処方薬乱用] [ハーブ系ダイエット薬、エフェドラ(Ephedra)の危険性]
2003年12月30日、アメリカFDA(食品医薬品局)は、エフェドラ製品販売禁止の方針を打ち出しました。 [TOPへ]
[覚せい剤依存症の治療]
覚せい剤依存症になると、専門的治療が必要ですが、日本の治療体制は極めて不十分です。幻覚や妄想状態のような覚せい剤精神病に対しては、一般精神病院での治療が可能ですが、覚せい剤を止めたくても止められないという覚せい剤依存症に対しては薬物療法はほとんど効果がありません。安易に睡眠薬や精神安定剤などを投与すると、逆に処方薬の乱用や依存を起こす危険があります。実際に覚せい剤乱用に加えて処方薬乱用を合併している患者さんは少なくありません。
残念なことに、日本には薬物依存症の専門病院はほとんどありません。薬物依存症はアルコール依存症と似ているので、アルコール症専門医がこの種の相談を受けることが多いのですが、薬物依存症患者はアルコール症患者より手がかかり、トラブルを起こしやすく、回復率も良くないので、治療を断る専門医も少なくありません。当院を強制退院にする患者の紹介先を探すときにはいつも苦労します。 [TOPへ]
[メスマウスについて] (この項目、10/08/19追加 →11/09/23、 別ページに転載)
覚せい剤乱用者の広範性虫歯について、いくつかのマスメディアから問い合わせがあり、文献にあたってみましたところ、単なる口腔内不衛生以上のことがあるようです。「メスマウス」という呼称まである、特徴的な症状の一つでした。情報源は、ほとんどが、アメリカないし英語圏のものです。折角調べたので、要旨をまとめ、別ページ転載しました。
このページの記事は、別ページへ移転しました。
キーワード:覚醒剤、覚せい剤,アンフェタミン、虫歯、,齲歯、う歯、歯科、歯科疾患、歯科衛生、口腔内衛生 [TOPへ]
[プソイドエフェドリンと覚せい剤] (この項目、2005年8月追加、同年12月、2006年9月改訂 →2010年6月、別ページへ転載改訂)
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キーワード:プソイドエフェドリン(pseudoephedrine、PSE)、フェニルプロパノールアミン(PPA)、覚せい剤密造、覚醒剤密造、無水アンモニア、グローテル(GloTell)、pseudo-runners、スーダフェド(Sudafed)錠、スーダフェドPE [TOPへ]
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⇒ TEL:0279-56-8148
文責:竹村道夫(初版:1999/03)
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