スポーツ外傷 2月13日高崎ラジオ放送1/9より
本日のテーマ『捻挫の応急処置』
1月になり何度か雪が降りましたが、滑って足首の捻挫をしてしまった人より
雪かきの為に腰痛になり来院した人の方がずうっと多かったようです。
また、ウィンタースポーツと言うとスキーでの受傷を思い浮かべますが、
現在は、スキーよりスノーボードが盛んなようで、
スノーボードで受傷する人の方が圧倒的に多い印象を持っています。
捻挫とは?
関節に生理的運動範囲以上の力が加わったとき、
関節構成体(靭帯、関節包、滑膜)が損傷される。
その外力は、引っ張り、捻じれであり、打撲(打ち身)によるものは捻挫とは言わない。
関節構成体とは?
靭帯とは、 骨と骨をあるいは、筋肉と骨を結合する。
関節包とは、関節を覆っている袋
強制姿位により、損傷した靭帯が引き伸ばされることにより痛みが発生する。
ねんざがよく起こる部位
足関節、足部
1.足関節外側靭帯損傷
2.足関節内側靭帯損傷
3.前脛腓靭帯損傷
4.二分靭帯損傷(外側踵舟、内側踵立方)踵骨前方突起骨折にならない場合
5.第4背側足根中足靭帯損傷 第五中足骨骨折にならない場合
6.第1−2楔状骨間靭帯損傷
膝関節
1・MCL損傷
2・ACL損傷
3・PCL損傷
4・膝関節外側支持機構の損傷
肩鎖関節
手関節
1・三角線維軟骨複合体損傷(TFCC)
指
1・PIP関節の側副靭帯損傷
側副靭帯、副靭帯、掌側板。撓側に多い。
2MP関節の側副靭帯損傷
尺側に多い。
受傷機転
1・不安定な角度での着地 バレーボール、バスケットボールでのジャンプ後
着地の際
2・接地面 ボールの上に乗る、足の上に乗る、路肩につまずく
3・外力 足の上に乗られる
4・不適切なシューズ 高いヒールの靴
捻挫の損傷の程度
1度 靭帯線維の小さな損傷 疼痛、圧痛、腫脹、出血軽度
痛みによる機能障害も少なく、出血も少なく、数日後皮下出血斑軽度
不安定性は見られない。
2度 靭帯の部分断裂 疼痛、圧痛、腫脹、出血は1度より強く
機能障害、不安定性もあり
3度 靭帯の完全断裂 関節内出血が生ずれば関節全体の痛みとなる
足関節外側靭帯損傷新鮮例(距骨傾斜角)
TTA <10度
10≦TTA<15 剥離骨片を有する症例は注意
15≦ 靭帯修復必要
左右の距骨傾斜角に5度以上の差がある。
スポーツ外傷による捻挫の頻度
最新データー
スポーツ外傷
バレーボール、バスケットボール、野球、サッカー
スキー外傷
高速度で動くスキーは転倒・衝突時のエネルギーが大きいため障害も多い。
ケミカルブーツの出現は足関節の脱臼骨折を減らしたが、膝の靭帯損傷を増加させた。
リフト、ナイターの整備はスキーをより高速化させ、転倒した際の肩関節、
肩鎖 関節脱臼を増 加させた。
スノーボードはスキーヤーズサム母指MP関節尺側側副靭帯損傷を増加させた。
『捻挫の応急処置』
RICE
R=rest 安静にする
I=ice 冷却 水や氷で冷やす。損傷部の出血を防ぎ、腫脹を抑制する。
15〜20分で可
コールドスプレーはよく患部をふいて、湿気をとって
凍瘡(しもやけ)に注意
5〜15度24時間冷却を続けると酸素欠乏により
室温放置の例より余計に腫脹が強くなる。
一日中冷却していて来院時腫脹と冷感が強い症例あり。
何でもやりすぎはよくない
C=conpression 圧拍 損傷部の出血を防ぐ。細胞組織間の圧を高め、漏出した体液
(血漿蛋白)をリンパ管へ流す、あるいは周辺に拡散させる。
E=elavaition 挙上 患部が心臓より低い部位では静力学的浮腫になりやすい。
靭帯損傷の治癒
自然修復機転
1.炎症期 損傷直後、出血、血漿成分の侵出から凝固系が刺激され
フィブリン塊が形成これにコラーゲンが絡み合い損傷部に引っ張りに対する強度
を持たせる。
プラスミンや好中球の蛋白分解酵素が損傷された組織を分解、除去する。
さらに、血小板、マクロファージから生じた成長因子が線維芽細胞、
内皮細胞の分裂を促進する。
2.増殖期 内皮細胞、線維芽細胞、筋線維芽細胞が増殖、血管の増殖。受傷後
1週間でコラーゲンが集まりはじまる。2〜3週まで?
3.成熟期 太い血管新生、コラーゲンの束の出現
最初の1週間が勝負、最初の1週間で腫れをとる
受傷後2〜3日は腫脹が強く痛みが強くなることはある。
1週間で腫脹は改善する
2週間後には断裂靭帯間に肉芽の形成
2ヶ月ごには正常の靭帯に近い状態 正常の強さの1/2程度
それ以降も1年近くまでコラーゲン線維は増え続ける。
修復中に適当な負荷がかかった方が修復がすすむ。
1.固定 弾性包帯固定
歩行できないとき、腫脹が強いとき
プライトンシーネ
その人の足の形に合った物を作る。
固定力があり、ある程度の弾性がある。
通気性がある
軽い
テーピングは皮膚かぶれが多く、汗をかくとゆるんでしまう
運動復帰ごに運動時のみ行う。
2.2〜3週後 理学療法開始 温熱療法、渦流、噴流浴、
マッサージ、手技療法により関節拘縮除去
3.4〜6週後固定除去し、弾性包帯固定
最終的には痛み、可動域ー拘縮が残っていないかチェック
陳旧性足関節捻挫
強制背底屈時に痛みがある
前距腓、踵腓靭帯に圧痛がある
左右可動域制限の差がある。=靭帯組織と関節周囲組織の癒着
関節包の肥厚は?
内外反ストレステスト、前方引きだしテストでの不安定性は?
X−p クリアスペースが平行か?
骨棘の存在
骨片、遊離体の存在
骨委縮
三角骨などの過剰骨の存在
治療方針
理学療法
可動域制限の改善ー交代浴 温刺激と冷刺激の繰り返し
手技療法
筋力強化ーカーフレーズ
水中浴歩行
運動の際には装具、あるいはテーピング
1・関節の柔軟性の強い人ー靭帯損傷を起こしやすい。
2・腱は生理的に発揮できる筋力の4倍の強さを持つが、
瞬間的な急な外力では簡単に断裂する。
3・持久的トレーニングにより腱の直径は太くなることが知られている。
4・しかし、強い運動負荷が長時間に渡ると、靭帯、腱、筋膜などのコラーゲン線維
や線維芽細胞は骨細胞の様に反応し始め、カルシウム沈着がはじまり、
骨化を始め骨の変形が起こり運動障害の原因となる。
文献
アスレチィクリハビリテェーションの実際
図説足の臨床
日経スポーツメディシン
スポーツ整形外科
スポーツによる軟部組織の外傷と障害.臨床雑誌整形外科VOL46.No.8,南江堂,1995