【性障害および性同一性障害 】
(改訂 04/06/08)
[ 注意 ] このページはいわゆるアダルトサイトではありません。性問題を扱っていますが、まじめな教育的内容で、ポルノ的内容は全く含まれていません。子供が見ても差し支えありませんが、一部専門的です。
[ はじめに ] 当院サイトを作って以来、たくさんのEメールをいただきますが、その中に、性に関するご相談の問題が多いことに気がつきました。性関連問題の一部は、アディクション(嗜癖)関連問題ですが、ご相談の中には、嗜癖関連問題だけでなく、実に様々な問題があります。日常の臨床では、性関連問題を主な訴えとする相談はそれほど多くないので、この現象の背景には、多分、以下のような理由があると考えます。
・ 日本にも、性関連の精神的問題に悩む潜在的な患者層がいる。
・ 日本には性関連の精神的な悩みを専門家に相談するというような習慣がない。
・ このような問題を扱う専門家や窓口が少ない。
・ Eメールの匿名性が性問題の相談に適している。
・ 性関連精神的問題の情報を提供するサイト、オンラインカウンセリングのサイト、自助グループ的サイトが少ない。あるいは見つけられない。
・ たまたま見つけた当院のサイトで嗜癖関連問題の記載を読み、恐る恐る相談のEメールを送ってみる人が多い。
ところで、筆者は精神科医であり、かつ嗜癖問題の専門家ですので、その関連で、性の問題には重大な関心を持っていますが、残念ながら性問題
一般の専門家ではありません。また、筆者の時間とエネルギー不足のため、この種のご相談のほとんどに適切な対応ができていません。そこで、こういった潜在的患者(あるいは悩める人)のために、性関連問題の基礎的情報(とくに基本的用語)の解説をするページを作ってみました。
[DSM−IVの用語解説 ] アメリカの精神障害診断マニュアル、DSM-IV(1994年)は、世界レベルの標準的な精神障害診断基準といってよいと思います。
このページではDSM-IVに沿って、この関連問題の概要を示します。
筆者が関心のある問題(多くはアディクション関連問題)には
、若干のコメントをつけてあります。
DSM-IVでは、この問題を、性障害および性同一性障害(Sexual
and Gender identity Disorders) という章で扱っています。この中には、性機能不全(Sexual
Dysfunctions)、性嗜好異常(Paraphilias)、性同一性障害(Gender
Identity Diorder)、および残余概念である、特定不能の性障害(Sexual
Disorder Not Otherwise Specified)が含まれています。
[ 性機能不全(Sexual Dysfunctions) ] 性機能不全は、性反応曲線を特徴づける各過程における障害、または性交に伴う疼痛が特徴的です。性反応曲線は、欲求、興奮、オルガズム、解消の4段階からなります。この各段階(解消を除く)のそれぞれに障害がありえます。性機能不全には、以下のような障害が含まれます。
性的欲求障害(Sexual Desire Disorders)
性的欲求低下障害(Hypoactive Sexual
Desire Disorder)
性嫌悪障害(Sexual Aversion Disorder) 性的伴侶との性器による性的接触の全て(またはほとんど全て)を、持続的または反復的に嫌悪し回避すること。その障害によって著しい苦痛が生じ、または対人関係が困難になっている。日本のセックスセラピー受診者では、圧倒的(9割以上?)に女性に多いらしい。性欲全般が低下している場合と、パートナーとの性行為を嫌悪したり、恐怖心を持っている場合があります。
性的興奮の障害(Sexual Arousal Diorders)
女性の性的興奮の障害(Female Sexual
Arousal Disorder):通称「冷感症」というのが、これに相当すると思われます。
男性の勃起障害(Male Erectile Disorder):通称「インポテンス」ですが、最近、これに代わって「ED,
Erectile Dysfunction」という用語が使われるようになりました。直訳すると「勃起不全」ですが、直接的過ぎるためか、「男性機能の低下」と訳されています。
[リンク] EDを正しく理解するために http://www.ed-info.net/index.html (02/05/20確認)
ED概念の基本的説明。ED対応医療機関など。
オルガズム障害(Orgasmic Disorders)
女性オルガズム障害(Female Orgasmic
Disorder)
男性オルガズム障害(Male Orgasmic Disorder)
早漏(Premature Ejaculation)
性交疼痛障害(Sexual Pain Disorders)
性交疼痛症(Dyspareunia)
膣けいれん(Vaginismus)
一般身体疾患による性機能障害(Sexual Dysfunction
Due to a General Medical Condition)
物質誘発性性機能不全(Substance-Induced
Sexual Dysfunction)
特定不能の性機能不全(Sexual Dysfunction
Not Otherwise Specified)
筆者のコメント:理論的には、性反応曲線の各段階の低下だけでなく、亢進が考えられますが、それには特定の障害名はなく、DSM-IVでは、「特定不能の性機能不全」とするか、後述する「特定不能の性障害」に分類することになります。
[ 性嗜好異常(Paraphilias) ] 性嗜好異常は、正常でない対象、行為、または状況に対し、強い性衝動を持ち、空想や行動におよぶものです。性嗜好異常には、以下のような障害が含まれます。
露出症(Exhibitionism)
フェティシズム(Fetishizm)
窃触症(Frotteurism):痴漢の中でも、とくに「おさわり魔」というのが、ほぼこれに相当すると思います。
小児性愛(Pedophilia)
性的マゾヒズム(Sexual Masochism)
性的サディズム(Sexual Sadism)
服装倒錯的フェティシズム(Transvestic Fetishism):異性愛の男性が、女装をすることに関する強い性衝動を持ち、関連した空想、行動におよぶものです。
窃視症(Voyeurism):いわゆる「のぞき魔」は、これに相当します。
特定不能の性嗜好異常(Paraphilia Not Otherwise
Specified) :このカテゴリーには、上記のいずれにも相当しない性嗜好異常です。例としては、電話わいせつ、死体愛、獣愛、糞便愛、腸愛(浣腸)、小便愛などが含まれます。
筆者のコメント:性関連障害の中でも、性嗜好異常は嗜癖問題とかなり関連があります。
「同性愛」がこのカテゴリーにも、次の「性同一性障害」のカテゴリーにも含まれていないことに注目してください。「同性愛」は、標準的診断基準では、異常あるいは障害とは考えられません。精神医学的にみて正常です。
[ 性同一性障害(Gender Identity Diorders)
] このカテゴリーには、この障害の中核部分である「性同一性障害」と、残余概念である「特定不能の性同一性障害」がふくまれます。
性同一性障害(Gender Identity Disorder):性同一性障害という診断を下すためには、2つの要素が必要です。それは、反対の性に対する強く持続的な同一感。そして次に、自分の性に対する持続的な不快感、またはその性の役割についての不適切感です。
特定不能の性同一性障害(Gender Identity Disorder
Not Otherwise Specfied):「性同一障害」の診断基準に合致しない性同一性の障害です。
筆者のコメント:近年、日本の大学病院で、性同一性障害の患者に対し、性転換手術(外性器の外科的形成術)が行われるようになって、マスコミの話題になりました。自分の肉体の性に違和感を覚える性同一性障害者は、女性では約10万人に1人ですが、男性では約3万人に1人とされ、女性の約3倍です。性転換手術は後戻りできない手術のため、日本精神神経学会の治療ガイドラインは、精神療法、ホルモン療法と段階を踏んだ後に手術を行うよう規定しています。
日本では、埼玉医大、岡山大学、札幌医大に「性同一性障害」の専門外来があります。お問い合わせは、それぞれの大学病院の専門外来に直接お願いします。
[リンク] Trans-Net Japan(TSとTGを支える人々の会)http://www.tnjapan.com/home.htm (04/07/12確認)
性同一性障害、トランスセクシュアル、トランスジェ
ンダーの自助・支援グループ。専門治療施設のリスト。
[ 特定不能の性障害(Sexual Disorder Not
Otherwise Specified) ]このカテゴリーは、以上のどの性障害の診断基準も満たさない障害のための残余概念です。
筆者のコメント:嗜癖問題専門家からみて、もっとも関心のある「恋愛嗜癖(Love
Addiction)」、「セックス嗜癖(Sex Addiction)」に対応する特定の診断がDSM-IVにはありません。だから、それらは、この「特定不能の性障害」に含まれることになります。
なお、アメリカの文献やネットでは、「セックス嗜癖(Sex
Addiction; Sexual Addiction)」、「セックス依存症(Sex
Dependency)」、 「恋愛嗜癖(Love Addiction)」や「恋愛依存症(Love
Dependency)」という用語をしばしば見ます。精神科医の用語(学術用語)としては、Sexual
Addiction を用い、Love Addiction はあまり使われないようです。
ほかに、アディクション関連のウェブサイトで、「ポルノ依存症(Pornography
Addiction)」という用語を見かけますが、これも相当する特定の診断がDSM-IVにはありません。
[日本のセックスセラピー]
日本でも、セックスセラピーをするクリニックや総合病院、大学病院などが少しずつ増えているようです。
性障害の中で、受診者が最も多いのは、「勃起障害」で、受診者の40−50%に相当するようです。男性のオーガズム障害のほとんどは、「膣内射精困難」と呼ばれるもので、これは、マスターベイションでは射精可能なのに、女性の膣内では射精できない、というものです。
近年、とくに日本では1989年頃から、「性的回避」と呼ばれる問題の受診者が増えているようです。これは、性欲があって、興奮し、オーガズムも障害されていないのに、性的パートナーへの愛情も十分あるのに、人間と相対すると性行動を回避してしまうという障害です。DSM-IVでは、性障害に分類されないかもしれません。失敗して恥をかく恐怖、パートナーから批判されたり、嫌われることへの恐怖、などが基底にあることが多いとされています。20代、30代の高学歴者に多いという報告があります。DSM-IVの「回避型人格障害」(Avoidannt
Personality Disorder)と診断されたり、その傾向のある症例が多いという指摘もあります。
ノン・エレクト法(non erect method)は心因性の勃起障害(ED)の治療法として開発されたもので、逆説的心理療法を原理とした行動療法です。日本の阿部輝夫氏の考案されたものです
センセート・フォーカス・テクニックは、セックスセラピーの基本的な手法で、感覚集中訓練、五感集中訓練、タッチングなどとも呼ばれています。マスターズとジョンソンによって開発されました。リラックスした状態でパートナーが互いのスキンシップをはかり、その心地よい触覚を治療に役立てようというものです。性嫌悪症、性欲低下、勃起障害、性交疼痛症、性的回避などに、広く用いられます。
[リンク]
性同一性障害に関する診断と治療のガイドライン(第2版)
日本精神神経学会による(性同一性障害、Gender
Identity Disorder)診断と治療のガイドライン
こ こ に も い た F T M
FTMというのは、Female to Male(つまり、女から男へ)の略語です。
FTM関連書籍
★Trans Sexual Forum in Japan★
Male to Female(つまり、男から女へ)のGID(性同一性障害、Gender
Identity Disorder)を扱う
性の問題を扱う相談機関一覧
http://www.mh-net.com/other/sex.html
あべメンタルクリニック
ノン・エレクト法で有名な阿部輝夫氏のクリニック
[お断り]
筆者は臨床医で、性問題の専門家ではありませんから、不適切な表現などあるかもしれません。気づかれた方はお知らせください。 また、原則として「性障害および性同一性障害」に関する相談や診療には応じられません。専門外です。ご了承ください。
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または、昼間の時間帯に、当院PSW(精神科ソーシャルワーカー)にお電話してください
⇒ TEL:0279-56-8148
文責:竹村道夫(2000/1/12)