【 からだ中がやられる : アルコール関連臓器疾患 】 赤城高原ホスピタル            

(改訂 00/12/12)


[ アルコール関連身体疾患 ]
脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変
胃腸 急性出血性胃炎、胃潰瘍、十二指腸潰瘍、
吸収不良症候群
急性膵炎、慢性膵炎
食道 食道炎、マロリー・ワイス症候群、食道静脈瘤、
食道ガン
心臓 アルコール性心筋症
中枢神経 ウェルニッケ・コルサコフ症候群、肝性脳症、
ペラグラ脳症、
アルコール性小脳変性症、痴呆
末梢神経 アルコール性多発神経炎
中毒性弱視
骨格 大腿骨頭壊死
筋肉 アルコール・ミオパチー
造血障害 貧血
代謝障害 糖尿病、痛風
その他 インポテンツ、胎児性アルコール症候群

 アルコール専門病院を10月前に退院した患者の名前を新聞の「おくやみ」の欄にみつけた。42歳。あまりに若い死である。しかし、彼は入院当時すでに満身創痍(まんしんそうい)だった。肝硬変、糖尿病、アルコール性心筋症、食道静脈瘤(りゅう)、慢性胃炎、大腿骨頭壊死(えし)、多発神経炎。すべて25年間の大量飲酒による合併症だ。しかも、彼の場合、体だけでなく心も深く病んでいた。食事療法無視の隠れ食い、隠れ酒、花札賭博、‥‥ 。1カ月余りで自主退院していった。生き残るためには、ずっと早い時期に断酒すべきだったのだ。

 アルコール依存症では、長期にわたる過度の飲酒の結果として、身体各所の臓器に障害を起こす。肝障害は、その代表的なもので、同病患者の8割にみられる。脂肪肝、アルコール性肝炎、肝硬変という順序で進行してゆく。脂肪肝は、多くの場合無症状。アルコール性肝炎では、黄疸(おうだん)、肝の腫大(しゅだい)、腹水、発熱、下痢、腹痛、貧血がみられ、しばしば死亡する。肝硬変では、全身倦怠感のほか、黄疸、浮腫、出血傾向、食道静脈瘤、特有の赤ら顔、手掌紅班(親指の付け根などの手のひらが赤くなる)、くも状血管腫(前胸部に毛細血管が浮き出る)、女性化乳房(男性なのに乳房がふくらむ)などがみられる。肝硬変になると、もう元の正常な肝臓には戻れない。

 糖尿病は、アルコール依存症患者の約15%にみられる。肝機能障害と慢性膵炎(すいえん)が関連しているといわれる。治療しないと全身の様々な合併症をひきおこすやっかいな病気だ。
 アルコール性心筋症では、心肥大、不整脈、体動時の呼吸困難、動悸(どうき)などがみられる。 ウェルニッケ・コルサコフ症候群は、長期大量飲酒の結果としておこる脳の障害で、早期に治療しないと記憶障害が回復不能になる。

 アルコール性多発神経炎は、アルコール依存症患者の1割程度にみられ、下肢のしびれ感、脱力、感覚麻痺や疼痛(とうつう)が特徴的だ。

 以上は、アルコール依存症の合併臓器疾患の一部である。厚生省研究班の1990年の調査によれば、一般病院入院患者の2割に、病気と飲酒との関連が認められるという。もしアルコール依存症が原因なら、身体疾患の治療だけでなく、断酒のための治療を行わないと、入院治療は単に飲める体づくりに手を貸すだけになりかねない。

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AKH 文責:竹村道夫(初版: 99/1) 


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