【 振戦せん妄: 重症型アルコール離脱症 】         赤城高原ホスピタル           

(改訂 2000/12/07)


 大酒飲みの人がちょっと体調を崩して、あるいはけがをしたりして入院します。その翌日くらいに、急に訳が分からないことを言いだして興奮してわめき散らしたり、トイレの場所がわからずにベッド脇で用を足そうとしたり、布団の中に小さな虫がいると言いだしたり、入院中なのに病室で仕事を始めようとしたり、というようなことが起こったら、多分それは「振戦せん妄」という病気です。

 長期にわたって大量の飲酒をしている人が飲酒をやめるか、飲酒量を急に減らした時、その数時間から数日後に中枢神経系が興奮状態になります。いわゆる禁断状態(医学用語は離脱症状)ですが、その重症型が振戦せん妄です。せん妄というのは、注意と認知の障害を伴う軽度の意識低下があり、意識レベルが変動する状態をいいます。振戦せん妄では、発汗や頻脈、発熱、手指の振戦、不眠、幻覚(実在しないものを見たり聞いたりする)や錯覚(実在するものを間違って知覚する)、興奮、不安などが見られます。大体は4、5日で急速におさまりますが、飲酒に関連した身体疾患(肝不全、消化管出血、頭部外傷、低血糖、電解質異常など)が潜在している可能性があり、放置すると意識障害や幻覚のために事故を起こしたり、けいれんをおこしたり、昏睡状態になり死ぬ事もありますから、必ず医療を受けてください。

 振戦せん妄になるということは、通常はその人がすでにアルコール依存症になっていることを意味します。

[アルコール離脱の症状]:●自律神経系の過活動(発汗、頻脈など)、●手指のふるえ、●不眠、嘔吐または嘔吐、●一過性の幻覚(幻聴、幻視、幻触)、錯覚、●精神運動興奮、●不安、●けいれん大発作。

[経過]:典型的には、断酒または飲酒量減少後4−12時間後(時に数日後)に出現、断酒後2日目に最も症状が強く、4−5日目に改善する。時に、遷延して、3−6カ月続くことがある。

[治療]:出現初期に、マイナートランキライザーを使用することにより、症状の出現、重症度をおさえることができる。


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AKH 文責:竹村道夫(初版:99/01) 


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